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「ICHI」(日本映画、2008年公開) 綾瀬はるかの横顔

「なに斬るかわかんないよ、見えないんだからさ」

はなれ瞽女の市(綾瀬はるか)が冒頭でつぶやくセリフ。

「座頭市物語」の主人公「市」を若い女に設定した時代劇。座頭が女性でも良いのか疑問を感じたが、座頭とは江戸期における盲人の階級の一つであり、映画では主人公を瞽女としている。

何の映画を見るか選ぶときに私の基準はほとんど長年の勘しかない。見ていない映画のストーリーや解説を事前に読んでしまうと先入観が残ってしまい、映画そのものを見る行為が損なわれてしまう気がして、なるべく情報を入れないようにしている。では、何を選ぶ基準にするかというと、3つの点を大切にしている。

  1. 監督
  2. 役者
  3. 予告編

この「ICHI」はというと、綾瀬はるかが見たかったからだ。予告編で見た「ICHI」の彼女が気に入ってしまった。そして、監督が曽利文彦。「ピンポン」の持つ映像の躍動感と対決の構図が明確なストーリーが印象に残っていた。「ベクセル」もその物語スケールは世界標準だった。

この「ICHI」の綾瀬はるかは横顔が美しい。彼女の本来は「ザ・マジックアワー」の役柄なのだろうが、この映画の感情を押し殺した表情が逆に魅力的になっている。

映画全体は様ざまな映画の記憶に溢れている。黒澤明の「用心棒」「七人の侍」「隠し砦の三悪人」、ご存知の勝新の「座頭市」シリーズ、「はなれ瞽女おりん」「砂の器」などなど。映画的記憶はオマージュなのか、やりすぎると映画自体のオリジナルな魅力がなくなってしまう。

曽利監督の世界を出しているのは、万鬼の頭(中村師童)と美藤宿の親分の息子(窪塚洋介)との対決の構図にある。窪塚が久しぶりにとても良いのが、この映画の収穫。もう一つの魅力は殺陣。スローモーションの美しさと「とばし」の編集カットが見事で、映像のリズムが素晴らしい。

物足りなさで言えば、男達の人物造形。市と心をかわすようになる藤平十馬(大沢たかお)が最後に刀を抜くことがなぜ出来たのかがもう一つ描写が不足している。

が、しかし、

どんなに汚されても、どんなに悲惨な状況でも美しい憂いのある綾瀬はるかの横顔は美しい。

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